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INTERVIEW

「このままでいいのかな?」30歳、大企業からスタートアップへ。入社8年目で踏み出した新しいキャリア

INTERVIEW

「このままでいいのかな?」30歳、大企業からスタートアップへ。入社8年目で踏み出した新しいキャリア
2026.09.11

「このままでいいのかな?」30歳、大企業からスタートアップへ。入社8年目で踏み出した新しいキャリア

大企業で働き、仕事にも人間関係にも恵まれていた菅谷怜未さん。それでも30歳を前に、「このままでいいのかな?」という思いが芽生えました。

大和ハウス工業株式会社で8年間、経営管理を担当した後、未経験の飲食業界へ転身し、現在は京生湯葉で巻くラップサンド「yuppa」の副代表として表参道店の経営に携わっています。

安定した会社を離れた理由と、新しい環境で感じた変化、30歳の今考えるキャリアについて聞きました。

「何不自由なかった」会社員生活で、30歳を前に感じた変化

――最初に会社を辞めようと思ったきっかけは何でしたか?

 

(菅谷さん)新卒で大和ハウス工業株式会社に入社し、経営管理を担当していました。8年間働く中で、職場や人間関係に大きな不満があったわけではありません。むしろ、周りの方々にも恵まれて、何不自由のない環境で働いていました。

 

それでも、入社7年目頃から少しずつ気持ちに変化が生じてきました。経営管理の仕事は、経験を積むほど仕事の流れが見えてきます。毎年同じようなサイクルで仕事が進み、ある程度慣れてきた頃、ふと「このままでいいのかな?」と思ったんです。

 

昇進のタイミングが重なったこともあり、30歳という節目を意識するようになりました。

表参道のyuppa店内でインタビューに答える菅谷怜未さん
会社員時代の葛藤をお話しされている菅谷さん

「今の仕事が今後の自分の成長にどれくらいつながっているんだろう」、「このままずっとここにいて、何かを残すことができるのかな」、そんなことを考えるようになりました。会社が嫌だったわけではないからこそ、辞める決断は簡単ではありませんでした。

 

ただ、新しいことに挑戦できるのは、今が最後かもしれない。そんな思いを抱えていたタイミングで、思いがけない声がかかったんです。

中学時代の同級生から突然の誘い。「yuppaの副代表をやらない?」

――どなたから声がかかったんですか?

 

(菅谷さん)声をかけてきたのは、現在のyuppa代表の渡邊です。出会いは中学1年生。同じ中高一貫校に通っていたんですが、当時から特別仲が良かったわけではなかったんです。社会人になり、偶然が重なって再び連絡を取るようになりました。

 

そして渡邊から「yuppaの副代表をやらない?」と声をかけられました。

左:yuppa代表 渡邊尋思さん、右:菅谷さん
左:yuppa代表 渡邊尋思さん、右:菅谷さん

▶ yuppa公式サイトはこちら

 

不動産業界で働いていたので飲食業界はまったくの未知の世界。それでも、今後のキャリアを模索していた時、思いがけず訪れた新しい挑戦は魅力的に映りました。タイミングもあったんだと思います。

 

渡邊と何度か話をするうちに「挑戦してみよう!」と思うようになりました。

母の不安そうな顔。それでも今は「yuppa応援団」

――大企業を辞めてスタートアップへ。周囲の反応はどうでしたか?

 

(菅谷さん)もちろん、周囲の反応が最初からポジティブだったわけではありません。特に印象に残っているのが、母の反応です。初めて話したときの母の不安そうな顔は、今でも忘れられません。

 

それでも、yuppaの事業や渡邊と一緒にスタートすることなど、ひとつひとつ説明していくと、母の表情は少しずつ変わっていきました。もともと私の家系は商売人だったこともあり、今では家族全員が「yuppa応援団」なんですよ(笑)。

 

会社員時代の上司や先輩たちからも、「なんと言おうがもう決めているんやろ? 自分が決めたことだから何も否定はしない。今までこの場所にいたということに自信を持って、誇り高くいてください」と言われました。

 

「誇り高く」。会社員時代、お世話になった部長からいただいたこの言葉は、自信をなくしてしまったときに思い出す、お守りのような言葉です。

大企業からスタートアップへ。「野放しにされたような気持ちでした」

――スタートアップで一番ギャップを感じたことは何ですか?

 

(菅谷さん)私がyuppaに入ったのは、店舗オープンのわずか3カ月前。しかも、これまでの仕事とはまったく違う飲食業界。想像以上のギャップがあり、野放しにされたような気持ちになりました。

yuppa入社後、オープンまで多忙を極めていた菅谷さん
yuppa入社後、オープンまで多忙を極めていた菅谷さん

会社員時代は、上司や先輩から指示をもらい、分からないことがあれば相談できる。仕事を進めるためのルールや仕組みもある。一方、スタートアップでは、自分で考え、自分で動き、全部自分で仕事を進めていく。まさに手探りの日々でした。周囲に頼れる先輩や上司もいないので不安で涙する日もあったんですよ。

 

当時借りていたオフィスは21時に閉まってしまうため、仕事が終わらないときは近くのマクドナルドで残業をしたことがありました。今では“聖地”といってもいいかもしれません(笑)。

 

――オープンまでの3カ月は、まさに激動の日々だったんですね。

飲食経験ゼロから、yuppaの経営へ

――yuppaはどんな事業ですか?

 

(菅谷さん)京生湯葉で巻く高タンパクなヘルシーなファストフードです。健康を意識した食事というと、「我慢」や「仕方なく食べる」といったマイナスのイメージを持たれがちですが、もっと気軽に食べることを楽しみながら健康になってほしい。そんな思いから生まれたブランドです。

 

私や渡邊の地元京都でも親しまれている湯葉を多くの人に楽しんでもらいたいと思っています。

 

一番人気のメニューは、「ORIGINAL MAZESOBA」。生湯葉とお醤油ベースの茶そばを組み合わせた、yuppa流のまぜそばです。私も、このメニューがお気に入りです!

一番人気の「ORIGINAL MAZESOBA」
一番人気の「ORIGINAL MAZESOBA」

 

代表の渡邊は前職で江崎グリコにてマーケティングを経験しています。マーケティングや事業づくりに対する彼の視座についていくことも大きな課題でした。私は飲食の知識も経営の知識もなかったので仕事以外の時間でも本を読んだり、飲食経営のYouTubeを見たり、渡邊に質問し続けたりしていました。

左:渡邊さんと、右:菅谷さんで二人三脚でyuppaを経営
左:渡邊さんと、右:菅谷さんで二人三脚でyuppaを経営

今でも、彼が考えていることは理解できないときがあります(笑)

 

起業して一番嬉しかったこと。前職の上司が買いに来てくれた

――スタートアップに入って、一番嬉しかった出来事は何でしたか?

 

(菅谷さん)2025年11月、店舗のオープン前にキッチンカーで、初めて自分でyuppaの商品を巻いて販売する機会がありました。そこに、前職の上司が買いに来てくれたんです。

 

「このあと、お土産にオフィスへ持っていくね」と言って、いくつか購入してくれました。初めて自分で作った商品を、これまで一緒に働いていた方々が食べてくれる。それがすごく嬉しかったです。

起業して一番嬉しかった出来事を話す菅谷さん
起業して一番嬉しかった出来事を話す菅谷さん

大企業を離れ、右も左も分からない環境で孤独を感じていた時期だったので、かつて一緒に働いていた人が、新しい挑戦を応援しに来てくれたことが本当に嬉しくて。孤独感が少し和らぎ、ホッとしたのを覚えています。

 

会社を辞めても、そこで築いた人とのつながりまでなくなるわけではありません。8年間の会社員生活で築いた人間関係が、今の自分を支えてくれていると感じます。

会社員時代、もっと会社全体を見て仕事をすればよかった

――会社員時代に「これをしておけばよかった」と思うことはありますか?

 

(菅谷さん)ひとつは、数字を見る視点でしょうか。

 

会社員時代は締め切りに追われ、目の前の業務をこなすことに意識が向いていました。決算書一つを作るにしても、会社全体のことを考えながら数字を見ればよかったと思います。

 

「この数字は、最終的に会社の業績へどう反映されるのだろう」、「自分が担当している仕事は、会社の経営にどうつながっているのだろう」。そこまで考えながら仕事をしていれば、自分の役割をもっと深く理解し、自信を持って働けていたのかなと思います。経営側に立った今だからこそ、気づけたことですね。

今だから気づく、会社員時代にしておけばよかったことを話す菅谷さん
今だから気づく、会社員時代にしておけばよかったことを話す菅谷さん

もう一つ、会社員時代にもっと大切にすればよかったと感じているのが、人とのつながりです。せっかく大きな会社にいたのだから、もっと多くの人と関わればよかったと思います。

 

スタートアップに入ってから、人とのつながりや新しい出会いが、仕事の可能性をどれだけ広げてくれるのかを実感しています。

表参道にお店を出すには?yuppaの資金調達から考える「出資」という選択肢

――表参道に自分のお店を構えることに、憧れる人も多いですよね。

 

(菅谷さん)私も最初、渡邊から声をかけられたとき、「表参道」という立地を魅力的に感じました。

 

ただ、私たちの場合は少し特殊なスタートだったんです。代表の渡邊が、南海電気鉄道株式会社による社外から新規事業のアイデアを募る事業創出支援プログラムに応募し、採択されたことをきっかけに出資が決まり、yuppaが立ち上がりました。

yuppaの店舗内装
yuppaの店舗内装

――お店を始めるには、自己資金や融資だけでなく、「出資を受ける」という選択肢もありますよね。

 

(菅谷さん)「表参道にお店を出す」と聞くと、遠い夢のように感じる人もいるかもしれません。けれど今は、ビジネスコンテストや事業創出支援プログラム、ベンチャーキャピタルなど、アイデアを形にするための資金調達には、さまざまな方法があります。

 

何かを実現したいと思ったとき、「必要なお金をすべて自分で用意しなければならない」とは限りません。さまざまな選択肢があることを知っておくことも、これから起業を考える人にとって、一つのヒントになると思います。

30歳の今。「3年後、5年後」はまだ分からない

――表参道に店舗をオープンされて約半年。3年後、5年後の夢や目標はありますか?

 

(菅谷さん)うーん……まだ分からないです(笑)。

 

オープンから1年も経っていないので、今は3年後や5年後を考えるより、まず目の前のことを着実にやっていきたいです。集客や売上、お客様の満足度向上など、スタッフと協力しながら、この店舗をしっかり軌道に乗せたいと思っています。その先に、yuppaの未来や、自分自身がやりたいことも見えてくるのかもしれません。

 

現在は、高タンパク・低脂質のブランドを経営していることもあり、健康についてもっと学びたいと思っています。いつかスポーツ選手の力になれるような仕事にも興味があります。今はまだ漠然としていますが、いつかどこかでつながったらおもしろいですね。

 

――菅谷さんは20代半ば頃まで「やりたいこと」が見つからず、不安を感じることもあったそうですね。今、同じように悩む女性に伝えたいことはありますか?

 

(菅谷さん)今、やりたいことが見つかっていなくても、焦る必要はないと思います。きっかけは突然訪れ、一気に人生を変えることがあります。

 

その日が来るまでは、目の前のことにコツコツ取り組んでみることです。しんどい時期や、思うようにいかないこともありますが、今の経験は未来につながっていくはずです。

 

私にとっても、8年間の会社員生活があったからこそ、経営側に立った今、気づけたことがたくさんあります。あの時間は、決して遠回りではありませんでした。

普通のOLだった私が、表参道で経営側にいる

――最後に、これから起業や独立を考えている同世代の女性へ、メッセージをお願いします。

 

(菅谷さん)この世の中、できないことはないと思います。

 

私は京都府福知山で育った「普通のOL」でした。それが今、同じ地元で育った同級生と一緒に、表参道でお店の経営に携わっています。テレビの取材を受けることもあり、夢心地になる瞬間もあります。

 

もちろん、運が良かった部分もあると思います。でも、私は「運も努力のうち」という言葉を信じています。周囲への感謝を忘れず、人との接し方を大切にすることも、新しい出会いやチャンスにつながっていくと思います。

今後の夢や展望を話す菅谷さん
今後の夢や展望を話す菅谷さん

もし何か目標があるなら、「私はこんなことをしてみたい」と、周囲に言葉にして伝えてみてください。そこから、思いがけない出会いや新しいきっかけにつながることがあります。

 

思い立ったら、行動すること。私自身も、今回の挑戦を通して、それを実感しています。

 

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この記事を書いたのは

松田 梓まつだ あずさ

ファイナンシャルプランナー。

Riche編集長。

 

大学卒業後、大手通信会社へ総合職として入社し、広報・PRに従事。その後、大手生命保険会社を経て、2019年にファイナンシャルプランナー(以下、FP)として独立。これまで200人以上のお客様の家計相談や資産運用のアドバイスを行う。金融機関での業務経験と広報・PRの経験を活かし、お金に関する記事執筆も多数行っている。

 

2012年から趣味の株式投資を開始。「FPとして難しい資産運用を分かりやすく、楽しく情報発信したい」と2016年に始めた資産運用をテーマにしたブログが人気となり、お金の情報発信により女性のお金の不安を払拭するため、株式投資の売却益を資本金に会社を設立。女性のお金とキャリアをテーマにしたWEBメディア「Riche」を運営。

 

プライベートでは子育てを日々楽しんでいます。

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